現在の労働関係を取り巻く状況をみると、就業形態の多様化により、会社と労働者個人の意見の食い違いに起因するトラブルが増加傾向にあります。こうしたトラブルが発生した場合の解決方法は様々です。多くのトラブルは、まず、会社と当該労働者の話し合いで解決を図ります。また、時には裁判になることもあります。さらに、平成13年から個別労働関係紛争解決制度が、平成18年からは労働審判制度が施行されていて、こうした制度による解決方法も考えられます。
労働基準法は、こうしたトラブルを解決する際に、必ずしも役立つ基準ではありませんでした。なぜなら、労働基準法は労働条件の最低基準を規定したものであり、労働契約に関する民事的なルールを規定したものではないからです。民事的なルールについては、民法や個別の法律において部分的に規定されているのみでした。多くの場合、雇用契約書や就業規則といった書類と実態の労働条件を比較し、これまで裁判で培われた判例法理をあてはめて解決を図ってきました。
こうした状況の中、個別の労働関係の安定に資するため、判例法理に沿った労働契約に関する民事的なルールを体系的に規定したものが、労働契約法です。
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