平成20年3月1日より労働契約法が施行されました。全19条からなるこの法律のポイントは何でしょうか?

■労働契約法とは?

現在の労働関係を取り巻く状況をみると、就業形態の多様化により、会社と労働者個人の意見の食い違いに起因するトラブルが増加傾向にあります。こうしたトラブルが発生した場合の解決方法は様々です。多くのトラブルは、まず、会社と当該労働者の話し合いで解決を図ります。また、時には裁判になることもあります。さらに、平成13年から個別労働関係紛争解決制度が、平成18年からは労働審判制度が施行されていて、こうした制度による解決方法も考えられます。

労働基準法は、こうしたトラブルを解決する際に、必ずしも役立つ基準ではありませんでした。なぜなら、労働基準法は労働条件の最低基準を規定したものであり、労働契約に関する民事的なルールを規定したものではないからです。民事的なルールについては、民法や個別の法律において部分的に規定されているのみでした。多くの場合、雇用契約書や就業規則といった書類と実態の労働条件を比較し、これまで裁判で培われた判例法理をあてはめて解決を図ってきました。

こうした状況の中、個別の労働関係の安定に資するため、判例法理に沿った労働契約に関する民事的なルールを体系的に規定したものが、労働契約法です。


■労働契約法は労使間の個別のトラブル予防に利用できます

労働契約法には罰則の規定はありません。また、規程の多くが訓示規定あるいは努力義務規定と解されています。では、労働契約法の存在意義は何でしょうか?それは、従来、判例法理の解釈によって導かれていた、労使間の個別のトラブル解決の規範が明文化されたことにあります。今後、トラブルが発生した場合は、労働契約法の趣旨や内容に沿った解決が図られます。そこで、労働契約法の内容に基づき、労働条件の成立、変更、終了の際にしかるべき手続きを取れば、労使間の個別のトラブル予防を図ることが出来ます。

実際に労働契約法が問題となる場面としては次のような場合が考えられます。

□退職金制度の廃止や見直しを考えている

□残業代対策の一環として、給与体系の見直しを考えている

□合併や分社化により労働条件の見直しを考えている


これらは見直しの内容によっては、労働条件の不利益変更に該当する可能性があります。労働契約法では、労働条件の変更には原則として労働者と使用者の個別の「合意」が必要と規定されています(第8条)。「合意」がなければ、原則として、就業規則を労働者の不利益に変更することもできません(第9条)。しかし、変更後の就業規則を労働者に「周知」させ、変更の内容に「合理性」があれば、変更後の就業規則の定めるところとなります(第10条)。

「合意」「周知」「合理性」の内容は労働契約法には記載されていません。これまでの裁判例や厚生労働省の通達等をもとに個別具体的にに判断することになります。画一的には判断できませんので、詳細は一度お問合せ下さい。当事務所では、このような場面で、事前に労働契約法の趣旨に沿った手続きを踏むことで、労使間の個別のトラブルを防止するための提案を行っています。




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