■労働契約法条文と内容

第1章 総則
第1条(目的)
この法律は、労働者及び使用者の自主的な交渉の下で、労働契約が合意により成立し、又は変更されるという合意の原則その他労働契約に関する基本的事項を定めることにより、合理的な労働条件の決定又は変更が円滑に行われるようにすることを通じて、労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資することを目的とする。

第2条(定義)

A

この法律において「労働者」とは、使用者に使用され労働し、賃金を支払われる者をいう。
この法律において「使用者」とは、その使用する労働者に対して賃金を支払う者をいう。

第3条(労働契約の原則)

A

B
C

D

労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。
労働契約は、労働者及び使用者が就業の実態に応じて均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。
労働契約は、労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。
労働者及び使用者は労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。

労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない。

第4条(労働契約の内容の理解の促進)


A


使用者は、労働者に提示する労働条件及び労働契約の内容について、労働者の理解を深めるようにするものとする。
労働者及び使用者は、労働契約の内容(期間の定めのある労働契約に関する事項を含む。)について、できる限り書面により確認するものとする。

第5条(労働者の安全への配慮)
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

<第1章の内容>
総則では、契約の一般原則について、これまで労働関係法規では明文化されていない概念が明文化されました。

第2条の「労働者」及び「賃金」については労働基準法の定義と同様に解します。しかし、「使用者」は個人企業の場合は事業主本人を、会社の場合は法人そのものを指す点で、労働基準法の「使用者」よりも狭い概念です。

第3条は @労使対等の原則 A均衡考慮の原則 B仕事と生活の調和への配慮の原則 C信義誠実の原則 D権利濫用の禁止の原則を規定しています。いずれも訓示規定と解されます。

第5条の「必要な配慮」とは一律に定まるものではなく、「労働者の職種、労務内容、労務提供場所等の具体的な状況に応じて」求められます。ただし、労働安全衛生法など法令上の義務は当然に遵守する必要があります。

第2章 労働契約の成立及び変更
第6条
労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。

第7条
労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分については、第12条(就業規則違反の労働契約)に該当する場合を除き、この限りでない。

第8条(労働契約の内容の変更)
労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。

第9条(就業規則による労働契約の内容の変更)
使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。

第10条
使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第12条(就業規則違反の労働契約)に該当する場合を除き、この限りでない。

第11条(就業規則の変更に係る手続き)
就業規則の変更の手続きに関しては、労働基準法第89条(就業規則の作成及び届出の義務)及び90条(就業規則の作成の手続き)の定めるところによる。

第12条(就業規則違反の労働契約)
就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。

第13条(法令及び労働協約と就業規則の関係)
就業規則が法令又は労働協約に反する場合には、当が違反する部分については、第7条(労働契約の成立)、第10条(就業規則による労働契約の内容の変更)、及び前条(就業規則違反の労働契約)の規定は、当該法令又は労働協約の適用を受ける労働者との間の労働契約については適用しない。

<第2章の内容>
労働契約は使用者と労働者の「合意」によって成立し、又変更するという契約の一般原則が明文化されました。さらに、わが国では従来から、就業規則による統一的な労働条件の設定が行われていましたが、使用者が安易に一方的に就業規則を変更することができないことも明文化されました。

もっとも、使用者が「変更後の就業規則を労働者に周知させたこと」及び「変更が合理的なものであること」という要件を満たした場合、例外として就業規則による労働条件の変更も可能です。「周知」や「合理性」の判断は個別具体的に行います。


第3章 労働契約の継続及び終了
第14条(出向)
使用者が労働者に出向を命ずることができる場合において、当該出向の命令が、その必要性、対象労働者の選定に係る事情その他の事情に照らして、その権利を濫用したものと認められる場合には、当該命令は無効とする。

第15条(懲戒)
使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

第16条(解雇)
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

<第3章の内容>
出向、懲戒、解雇について、使用者の権利の濫用を禁止した規定です。権利の濫用と認めらるとその部分は無効となることを規定しています。
権利の濫用か否かの評価の前提となる事実については、原則として、使用者側に立証責任があります。


第4章 期間の定めのある労働契約
第17条


A



使用者は期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。
使用者は、期間の定めのある労働契約について、その労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない。


<第4章の内容>
「やむを得ない事由」があるか否かは個別具体的に判断されます。もっとも、契約期間は使用者と労働者が合意をして決定したものですから、第16条(解雇権濫用法理)にいう「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当である」と認められる場合よりも狭いと解されます。

なお、期間雇用者には、パートタイム労働者を含みます。労働契約法では、パートタイム労働者と正社員を区別していません。4月施行予定の改正パート労働法で問題となります。特に、働き方が通常の労働者と同じ状態のパートタイム労働者の取扱いに注意が必要です。


第5章 雑則
第18条(船員に関する特例)  省略
第19条(適用除外)  省略


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