残業代の対策としてどのようなものが考えられますか?

■■残業代対策の一例

□まずは発想を変える

いかに残業代を「免れるか」という発想から、いかに残業代を「削減するか」という発想へ。少なくとも、管理監督者にすることで、残業代を免れるという考え方は、今後、通用しなくなります。

□就業規則、雇用契約書を再チェックする

ひな型の就業規則や雇用契約書を使用していませんか?労働時間や賃金は就業規則や雇用契約書で判断されます。会社の実態と乖離した就業規則や雇用契約書では思わぬ落とし穴が潜んでいます。労働時間や賃金をきちんと明示することで、あらぬ紛争を事前に予防することができます。

□労働密度を向上させる

労働密度の向上により残業時間の短縮を目指します。作業の標準化や業務の改善をいかに行うかが重要となります。また、残業を届出制にする等の創意工夫をし、惰性での残業防止を図ります。

□労働基準法を有効活用する

変形労働時間制、休日の振替、休憩時間の延長など、労働基準法の規定を利用することでも残業代の削減は可能です。


■チェーン展開する飲食業及び小売業の管理監督者

厚生労働省は、チェーン展開している飲食業・小売業の店長などが労働基準法上の「管理監督者」に該当するかどうかの具体的な判断基準を盛り込んだ通達を、都道府県労働局長宛にだしました(平成20年9月9日)。

この通達では、いわゆる「名ばかり管理職」の判断基準として、以下のことなどを挙げています。

@ 職務内容、責任、権限について

 
 「パートやアルバイトなどの採用や解雇の権限がない」
  「部下の人事考課に関与できない」
  「パートらに残業を命じる権限がない」


A 勤務態様について

  
「遅刻や早退をした場合に減給などの制裁がある」
  「長時間労働を余儀なくされるなど、実際には労働時間の裁量がほとんどない


B 賃金について
 
 「時間あたりの賃金がパートらを下回る」
  「役職手当などが不十分である」



■そもそもの問題の所在は?

労働基準法上、時間外(休日)の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の25%(35%)以上を支払う必要があります。もっとも、この規定はいわゆる管理監督者には適用されません。労働基準法第41条に「監督」「管理」の地位にある者は、労働時間、休憩、休日に関する労働基準法上の規定は適用されない旨が定められているからです。

従来から、この「監督」「管理」の地位とは、「経営者と一体的な立場にある者」とされています。また、平成20年1月28日の東京地裁判決では、「経営者と一体的立場で重要な権限を持ち、賃金が優遇されている者」と判示されました。

いずれにしても、管理監督者には経営者と一体的な立場が要求されるのですから、本来ならば役員に限られる狭いもののはずです。しかし、管理監督者であれば、残業代は不要となるという信仰があるため、やたらと役員が多い会社が出てきています。課長という名称を与え残業代を支払わないパターンが多いのではないでしょうか。社会保険労務士でも、残業代を免れるために、従業員を課長にしてしまいましょうという提案をする者もいると思います。

この考え方の問題点は、管理監督者にすることが、残業代を削減するための「手段」となっているということです。しかし、両者は別次元の問題です。管理監督者は、経営者と一体的な立場にあり、労働時間の枠を超えてもやむを得ないから労働時間(残業代)という概念に馴染まないのであって、その逆は成立しないからです。

したがって、実態を無視して、とりあえず役員の名称を与え、形を整えるというやり方は成立しません。もはや、残業代を「免れるために」、管理監督者にしましょうという考え方は通用しなくなりました。


こんな会社は要注意!

□やたらと課長や店長がいる

残業代削減の手段として、管理監督者の名称を使用している場合、本当に経営者と一体的な立場といえるか否かを改めて検討する必要があります。そして、万が一争いが起こった場合に備え、管理監督者であるといえるための証拠書類を準備しておくことが望ましいです。逆に、実態が管理監督者といえない場合は、残業代は支払うとした上で、いかに残業時間を削減するかという発想で対応するべきでしょう。

□基本給以外の手当を支給していない

たとえ、世間相場からみて十分な金額を支払っているとしても、基本給として支払っている場合、別途、残業代を支払う義務があります。争いが起こった後で、基本給に○○時間分の残業代を含めていたと主張しても認められません。雇用契約書や就業規則で事前に明示する必要があります。


□残業手当は支給しているが、深夜手当に相当する手当がない

時間外労働と深夜労働の割増賃金は、別個に考えます。時間外労働をして、それが深夜に至った場合、割増賃金は時間外25%UP+深夜25%UPとなります。したがって、深夜に時間外労働を行う可能性のある会社は、深夜手当まで考慮した給与額の設定をしなければなりません。

□36協定の届出をしていない。あるいは36協定を知らない


そもそも、労働基準法上、労働時間は1日8時間、1週40時間と定められています。たとえ残業代を支給するとしても、この法定労働時間を越えて労働させる場合は、36協定を締結し労働基準監督署へ提出する必要があります。36協定の届出違反自体に罰則はありませんが、これを届けずに法定労働時間を越えて労働させた場合、6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処されます。なお、実際の労働時間の取り決めは別途就業規則に定める必要があります。


残業代の対策等についてご不明点がございましたら、ご相談窓口よりメールでお気軽にお問合せください



〒170-0013 東京都豊島区東池袋1−48−10 25山京ビル3F
佐々木社会保険労務士事務所 特定社会保険労務士 佐々木 誠

Copyright(C)2008-2011 MAKOTO SASAKI. All Rights Reserved.
無断転載・転写・コピー等を禁じます。